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バイオマスの「木質ペレット」は次世代のストーブ燃料

2019.10.17

木質燃料には昔ながらの「薪」や木材などを細かく砕いた「木質チップ」、近年登場した「木質ペレット」がある。木質ペレットは1982年から日本でも製造され始めボイラーやストーブで使用されている。
木質ペレットを燃やして部屋を暖める「ペレットストーブ」は、暖炉のような心地よさと高い安全性や効率性を備えた今注目の暖房器具だ。

木質ペレットは間伐材や製材工場などで発生する樹皮やのこ屑などの残材が原料。これらを乾燥させ直径6~8mm、長さ5~40mmの小さな円筒状に圧縮成形している。すべて同じ大きさ、同じ形に成型しているので小型のボイラーやストーブでの自動供給や細かい温度調節が可能だ。含水率も10%以下に抑えられており着火性と燃焼効率にも優れている。
木質ペレットを燃やすと二酸化炭素が発生するが、これは樹木が成長する際に吸収したものなので大気中の二酸化炭素は増やさない。また間伐材を利用することで森再生の手助けにもなるという。地元の間伐材や廃材等の「地産地消」を推進する自治体では、ペレットストーブの導入やペレットの購入に助成金制度を設けているところもある。

暖炉とはちがいペレットストーブでは電気も使用する。使われるのはペレットを燃やすと発生する煙やにおいを排出するファン、ストーブ内蔵のタンクから燃焼室へのペレットの自動供給、着火不良や給排気不足などの異常感知で自動停止するセンサー、操作を簡単するタッチパネルなどで、これにより暖炉にはない快適性と安全性が高まっている。さらにファンを使用することで煙突も不要になり、最近ではマンションに設置できるものもあるという。
供給が不安定な石油燃料に対し木質ペレットは安定供給できるのも強みだ。「一般社団法人日本木質ペレット協会(https://w-pellet.org)」によると、ペレットの価格は10kgで600円前後が目安で、1袋5kg・10kg・15kg・20kg単位で販売されていることが多い。また機種やペレットの品質で差はあるが、火力が「中」で約1kg/hのペレットが消費されるので、仮に10kg=600円のペレットを購入して1日10時間、1か月25日使用すればペレット代は1か月15,000円と電気代が750円程度かかる。エアコンなどと比べると一見高そうだが、建物の断熱性能や住んでいる地域によって差はあるものの、30~40坪程度の住宅ならペレットストーブ1台で十分に暖まるという。寒さが厳しい地域での普及率が高いのはこのためだ。
但し木質ペレットを購入する際に気を付けたいのが、木質ペレットにもグレードがあること。ヨーロッパでは既にペレットのグレードが細分化されているが、日本ではまだ明確な基準がない。販売店などに相談してできるだけ灰や煙が少なく、燃焼効率の良い良質のペレットを選ぶことが大切だ。

このように人にも環境にも優しいペレットストーブだが、面倒でも避けられないのが定期的なメンテナンス。燃焼室に残ったクリンカー(ペレットが燃焼される過程で生成されるガラス質成分により灰が溶融固化した塊状のもの)や、煙突やファンにたまった煤、さらにはタンクの底にたまったペレットのくずなどは自身で定期的に取り除く必要がある。慣れてしまえば大した作業ではないが、稼働中に怠ることはできない。
最後にお伝えしたいのがペレットストーブ最大の魅力といえる「炎」。最近炎のゆらめきが人への癒しになることがわかってきたが、その優しいゆらめきを自分の家でいつでも眺められるというのはなかなかの贅沢と言える。
環境への負荷を抑えつつ、冬を快適に心豊かに過ごさせてくれるペレットストーブ。次世代暖房の新しい選択肢として注目していきたい。

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